Chanel N°5
シャネル N°5 オードゥ パルファム
20世紀を象徴するアルデヒド・フローラルの金字塔。特定の花ではなく『女性そのものの香り』を目指した抽象的な構成で知られる。
マッドメン / ドラマ・2007
1960年代マンハッタンの広告代理店スターリング・クーパーで、唯一の女性コピーライターとして頭角を現すペギー・オルソン。劇中、彼女がつけている香水を「Chanel No. 5?」と問われた瞬間、ペギーは「It's all I wear.(それしかつけないの)」と即答する。1921年にガブリエル・シャネルが「特定の花ではなく女性そのものを纏う香り」として世に出したアルデヒド・フローラルの金字塔は、ペギーにとって職業人としての矜持と、男性社会に媚びない女性の自我を象徴するアイコンとして機能している。言葉を扱う仕事に身を置く彼女が、最も雄弁な答えとして「N°5」を一言だけ返す――そのワンセンテンスの応答が、1960年代マッドアベニューに立つ女性キャリアの輪郭を強く描き出す名シーンとなった。
シャネル&ストラヴィンスキー / 映画・2009
1920年、南仏グラースの調香室。ガブリエル・シャネルは調香師エルネスト・ボーとともに、いくつもの試香からなる香りのなかを探り続ける。「特定の花ではなく、女性そのものを纏う香り」を求めて選び抜かれた5番目の試作――「numéro cinq」――が、のちに20世紀を象徴するアルデヒド・フローラルN°5となる。本作はその誕生の瞬間そのものを物語の核に据えており、香水が単なる小道具としてではなく、一人の女性の創造の意志として描かれる稀有な作品である。シャネル社の製作協力のもとで撮られた、香りの起源をめぐる一編。
プリシラ / 映画・2023
1960年代のグレイスランド。エルヴィスとの語らいのなか、彼はふとプリシラの纏う香りに気づき「それ、何ていう名前?」と尋ねる。プリシラの答えは短く一言――「Chanel No. 5」。ソフィア・コッポラ監督が描くこの場面で、1921年生まれの伝説的な香りは、少女だったプリシラが大人の女性へと変わっていく過程をそっと示す記号として置かれている。ブランドの公式支援のもとで撮られた、香りと自我をめぐる静かな名シーン。
ゴシップガール / ドラマ・2007
シーズン4第13話。ファッション誌Wでインターンの座を争うブレア・ウォルドーフは、同僚のデスクに置かれたシャネルN°5を拝借し、あろうことか上司のカプチーノに数滴垂らす。ひと口飲んだ上司が「どうしてこれ、シャネルN°5の味がするの?」と眉をひそめる――。名香が悪戯の小道具に転じるこのエピソードは、N°5があまりに有名であるがゆえに「匂いで分かってしまう」という前提そのものを笑いに変えている。アッパーイーストサイドの少女たちの世界で、香りが権力と駆け引きの道具になる一幕だ。
おかしなおかしな訪問者 / 映画・1993
魔法の手違いで中世から現代フランスへ飛ばされた騎士ゴデフロワ。豪奢なバスルームで彼が見つけた高価なシャネルN°5の瓶を、彼は上等な入浴剤か何かと思い込み、惜しげもなく浴槽へどぼどぼと空けてしまう。フランス映画史に残る大ヒットコメディのこの場面は、N°5が「説明不要の贅沢の象徴」であることを逆手に取ったギャグ。仏Wikipediaもこれをプロダクトプレイスメントの一例として記録している。時代錯誤の主人公の目には、20世紀最高の名香すらただの香り高い液体に映る、という可笑しみが凝縮されている。
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